おかあさんの階段

中学生の息子をもつアラ還主婦の日々の思いを綴ります。

お父さんはシャーロック・ホームズ

 調べ物をすることが多い仕事をしています。地域の図書館で調べられない時は、国会図書館を当たることも多いです。


 今回お願いされた案件は、俳句の出典を探せというもの…。どうしよう~ 何も手がかりがない。ただあるのはK町にある句碑の作者だということ。
 その名は、吉田絃二郎・明枝夫妻。このどちらかが作った俳句なのです。どちらなのでしょうか…? 図書館の司書さんたちもお手上げ状態でした。


 星ばかり美しき夜となりにけり
 から松のちるや秋立つ風の声
 夕きりの中なつかしや人の声
 長き夜や浅間越(こ)ゆらん人の声
 暑き日や浅間小浅間打(うち)けむる


 吉田絃二郎は、私の父が愛読者で、実家に『小鳥の来る日』という本があったことをうっすら覚えていました。ただ覚えているのは背表紙のみ。そんな記憶、なんの役にもたちません。


 図書館で全集をみると、なんと18巻もあって、どこから手を付けていいのやらです。っていうか。随筆の中に短歌や俳句がちりばめられていて、短時間でここから探し出すのは至難の業と思われました。


 こういう時、頼りになるのがお父さんです。聞いてみたら、Googleで俳句を打ち込んで検索してみよとのこと。さっそくやってみましたが、ヒットしません(汗)


「まかせてください。やってみます」と言った手前、「できなかった」とは言えません。


 今度はお父さんが、パソコンに向かって何やら検索し始めました。そして数分後、
「K情報館をあたってみろよ~何かてがかりがつかめるかも」


 藁にもすがる思いでメールをしたところ、なんとそこの担当者の方がものの数分で連絡をくださいました。


 「第二書房の『夜や秋や日記』という本の後ろのほうに夫人の句が出ています」
 丁寧に掲載ページまで添えててありました。さすが専門家は違う! というか、この方の調査能力もものすごいです! しかも、とても親切な方でいろんな情報を教えて下さいました。
渡る世間に鬼はなしだなあとつくづく思ったしだいです💛



 上に挙げた俳句は、吉田絃二郎ではなく、その妻の明枝夫人のものでした。吉田絃二郎さんって、ものすごく奥さん思いの人で、薩摩と修善寺と長野県に2か所、計4か所に奥様の句碑を建てているんです。


 明枝夫人の句も素敵なんですが、絃二郎さんが奥様を看病した時の短歌がまた泣かせる内容で、ぜひ皆様にも読んでいただきたいと思います。上の国会図書館デジタルコレクションでぜひどうぞ~。どの随筆も心にしみいるような哀感が漂っています。


玉ほこの道ははるはると旅を来し二人なりしをしみしみ思ふ
われを拝み氷のかけら飲みたしといふ妻あはれせんすべもなし

わが涙見付けぬまでに衰へし妻をし見ればかなしかりける
真夜中の病院はいと静かなりわれ一人起きて妻を泣きをり


奥様が亡くなった時の俳句もあります。


おとなしう散ってしまひぬ草のつゆ
ゆめの世をしみじみ語る秋もなく


 で、ウチはといえば、いつもはケンカばかり。吉田絃二郎・明枝夫妻の爪の垢を煎じて飲んだほうがいいんじゃないかと思うぐらいです(笑)。


 でも、今回は最大の功労者であるお父さんに対して、改めて尊敬の念を抱いてしましました。これは本当です!


「お父さんの検索能力ってすごいけど、いつもどうやって調べているの?」
「俺は昔、シャーロック・ホームズ協会の会員だったんだぜ。ホームズみたいに鼻をきかせるのさ~」


 ウチにシャーロック・ホームズがいると、正直何かと便利です…なんちゃって!
 ありがとね、お父さん!